No.1510。9

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でも、今に合わせてみると────









「よーし、行くか」









「もうちょっと観たい」









「え？MV？」









「うん」









「……本物、ここに居ますけど。モニターの俺のが良い？」









「ううん、そうじゃないよ。でも観たい」









「じゃあ……終わるまで」









「うん」









今にピントを合わせると、微笑む隆二さんが居る。









「隆二さん」









「んー？」









「私、大好きだよ、隆二さんのこと」









今伝えなきゃいけないことが見えてくる────。









「誰が聞いてるか分かんないのに大胆だなぁ」









「あ……ごめんなさい」









隆二さんはチラチラっと辺りを見回し、私の耳に唇を寄せた。









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「俺も」









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大勢の人が行き交っていて、一秒たりとも風景がじっとしていることがないこの場所。









そこで立ち止まっている隆二さんと私。








たまには止まって今を見つめてみるのも、良いと思った。









愛したくなるような雨の中、私と隆二さんは









そっと手を繋いで流れる映像を見つめ続けた。









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10月28日
隆二さんの後ろ姿を写した写真は消した。
大事なのは今、そこにある姿。

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