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隆二さんはそう言って笑って腰を浮かせ、照れてる私の頬に唇を寄せた。
「ありがとう。大事にする。ありがとう」
ハグされて、耳元でありがとうって囁かれて、何だかまた、額に汗が滲んできそう。
良かった。
プレゼント出来て良かった。
.
.
「お願い事してから消してね」
真っ暗な部屋と、ろうそくの灯り。
隆二さんは「分かった」と言って目を閉じて、随分長い間何かを願っていた。
「うん」
焦れったい程の時間のあと、隆二さんが、ふっと息を吹き掛ける。
炎が揺れて、そして微かな煙が余韻となって流れた。
私はリモコンに手を伸ばし照明をつけたあと、拍手をした。
「おめでとう、隆二さん!素敵な1年になりますように!」
「ありがとうございまーす!」
私と同じリズムで拍手をしていた隆二さんが、ふいにその手を止めた。
「素敵な1年にしたいので変わらず俺の傍に居てください」
そう言って、ピョコっと頭を下げた隆二さん。
────傍に居てくださいってお願いしなきゃいけないのは私なのに。
あっち行けよって言われても、私は隆二さんの傍に居たいくらいなのに。
胸がキューっとして鼻がツンとして、私はパチパチまばたきをしながら「はい」と小さく呟いた。
「………お前、ちょっと泣いてね?」
「泣いてないよ?ろうそくの煙にやられちゃいました」
「へぇー」
隆二さんが長い時間何を願ったのか気になったけど
この満点の笑顔を見てしまうと、そんなことは忘れてしまう。
「よし、片付けしよ!」
「俺もやるよ」
「座ってて。今日は主役ですから」
「何で、良いじゃん。二人でしよ」
「……うん」
そうだね、一人で出来なくもないけど、二人なら楽しいよね。
どんなことも。
「隆二さん洗剤付けすぎだって!」
「え?そう?いっぱい使った方が綺麗になるんじゃね?」
「違う!全然違う!」
キッチンに立つ私のデニムのポケットには、もう1つプレゼントが潜んでる。
でもそれを渡すのは、
彼が旅立つ朝に────。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時