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笑う隆二さんのTシャツをたくしあげて頭から引き抜いたあと、私も着ていた物を脱いだ。
されるがままになっている隆二さんが腕を伸ばして私の髪に指を入れ、視線で私の体をなぞる。
「絵に描いたみたいな体してる」
「それは隆二さんの方じゃない?」
今度は彼の指先が、首筋から鎖骨、膨らみから腰へと私の体をなぞった。
私は体を倒し、隆二さんにキスをする。
少しだけ離れた唇と、くっついたままの鼻先。
「寂しかった?」
吐息混じりの彼の言葉に私は小さく2度頷いて、また唇を重ねた。
────聞いてよ、隆二さん。
今なら、海外に居る隆二さんに“今帰ってきてよ”って言った誰かの気持ちがちょっと分かる。
秋の気まぐれな雨の中でも、満員電車の中でも、
いつでも思い出してた隆二さんのこと。
こんなに誰かに焦がれたことなくて、眠れない夜もあって。
でも“今帰ってきてよ”とは言わなかった。
だから今夜は、携帯の音も外の音も聞こえないふりして
その掠れた声で私の名前を呼んで、飽きるまで抱いててね。
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「りんご……りんご……あった」
24日。私はスーパーで出来るだけ赤いりんごを選んでカゴに入れた。
家に帰ってからケーキを焼き、ナッペし終わった物を冷蔵庫に入れた頃────
「うぃー、間に合ったー」
息を切らして隆二さんがうちに来た。
「お疲れさまです。今ね、丁度りんごをバラにするとこ」
「あ、俺の得意なやつね」
「そうそう」
二人で笑い、隆二さんはブルゾンを脱いでキッチンで手を洗う。
「どれー?貸してみなよ」
隆二さんはカッティングボードの上にりんごのスライスを並べ始めた。
「やり方覚えてる?」
「覚えてる」
少しずつ重ねたりんごが、隆二さんの指で端からクルクル丸められていく。
甘いシロップで濡れた指が何だか色っぽくて、私はつい見とれてしまった。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時