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手に職を持っている彼女は、一人でも充分にやっていけた。
それでも、誰かと人生を歩むことを選んだ。
恐れず、まっすぐに。
「私ねぇ、闇山闇子なんだよー」
「……は?」
「闇があるんだって、純奈に言われた」
「純奈ちゃんって、あの楽しい子でしょ!?闇山闇子かぁ……」
「そもそもそんな人と結婚したい人居るかなぁ?居なくない?」
「そう?私はそうは思わないけど……あ、闇山ぁ、私デザート食べたい」
「闇山呼び!?因みに会社じゃアイアンマンって呼ばれてる」
「あるときはアイアンマン、またあるときは闇山……って昭和のアニメじゃん」
「………」
家に帰りついてから、私はお風呂の用意をし、真由が入る前にバスルームの床をタオルで拭きあげた。
「ここまでしなくて良いってば!」
「何でよ!滑ったらどうすんの!」
真由は大きな声で笑い「昔から慎重派だよね」と私の肩を叩く。
「ありがとう。お風呂借ります」
「どうぞどうぞ」
その夜は少し遅い時間までデカフェ片手に話をして、寝室にお布団を並べて二人で横になった。
「やっぱりあの物件にしようかなぁ、病院近いとこ」
「中央線の?私もあそこが良いと思う。広いしね」
「だよね?……って言うか二人で寝るとか久しぶりじゃない?」
「ね?二段ベッドじゃないけど」
「ふふっ。懐かしいね」
何かに反抗したくて、でもその行き場が見つからなくて……そんな時もこうして真っ暗な部屋で二人で話したなぁと思い出す。
「A」
「ん?」
「A、今幸せ?」
「うん、幸せ」
「良かった。安心して眠れる」
「真由は昔から大袈裟派だよね」
「えー?どこがー?失礼なおばちゃんだねぇ」
「ちょっと、赤ちゃんに語りかけてる!?変なこと語りかけないでよ」
「このおばちゃん闇山闇子だって。怖いねぇ早く寝ようねぇ」
「……はーい、おばちゃんも寝まーす」
そして、それから1時間ほど経ったころ
隆二さんから電話がかかってきて、私は真由を起こさないようにそっと寝室を出た。
「もしもし」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時