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「どうぞ」
「ありがとー」
隆二さんは、本当によく食べる人。
現場には、基礎工事のときに出てくる水を吸い上げる給水ポンプがあるけれど、あれを思い出す食べっぷり。
お皿に乗った物が、あっという間に消える。
「美味しいなぁ……」
独り言みたいに呟いた彼のその言葉に、私の気持ちも吸い込まれる。
「隆二さん、ケーキの分のお腹は残しといてね」
「何?ケーキ作ったの?」
「ケーキね、作ろうと思ったんですけど、暑いときの素人の手作りケーキって怖いじゃないですか」
「何で?」
「お腹痛くなったりしたら怖い。隆二さんライヴ前だし」
「あぁ、なるほど」
「だから買ってきました」
「ありがとね。大変だったでしょ?買い物したり作ったり」
「ぜんっぜん!隆二さんのことに関しては、わりと出来る子になりますから私」
へへっと笑った隆二さんが、テーブルの下で私の足をちょっとつついた。
「また可愛いこと言ってさぁ」
好きな人の為なら、不思議と頑張れてしまう。
恋愛のいいところを教えてくれたのも、隆二さんだ。
「これ、おかわり」
「はい」
隆二さんの食はどんどん進み、ワインも1本空いた。
「あー……食ったな」
「いっぱい食べてくれてありがとうございます。作りがいあります、本当に」
「ありがとう、美味しかったー。ごちそうさま」
「いえいえ」
テーブルのお皿を下げ、私はケーキの用意をし隆二さんへのプレゼントをそっと背中に隠した。
「はーい!ケーキでーす!」
「ケーキでーす!ってケーキ持ってくる!?」
隆二さんはゲラゲラ笑ったあと、ケーキの写真を1枚収めた。
いちごとブルーベリーがいっぱい乗った、シンプルなバースデーケーキ。
明日か明後日か……きっと隆二さんは大きなケーキをみんなに用意してもらえるはず。
私は控え目でいこうと選んだケーキ。
「あの、隆二さん」
「ん?顔面ケーキする?」
「しないしない。あのね、ケーキ食べる前に、プレゼント……」
「え?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時