To you. ページ1
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「出来たぁ……」
9月1日。
隆二さんの誕生日イヴ。
1日早いお祝いのテーブルに並べたのは、隆二さんが好きだと言ってくれた料理ばかり。
和洋折衷と言えば聞こえは良いけれど、何だかチグハグな食卓。
でも、隆二さんが好きなものを好きなだけつまめるからコレで良いのかも。
「うん、よしよし」
エプロンを外し、私は額の汗をぬぐった。
9月になったとは言え、暑さは少しも和らいでいない。
キッチンの窓を少しだけ開け、私は夜の空気を胸に吸い込んだ。
────そのときインターホンが鳴って、私は玄関へとダッシュ。
「お疲れさまです」
玄関のドアの向こうには、主役の隆二さん。
「なになに?もう美味しい匂いする」
「ちょうど出来たとこ」
微笑んだ隆二さんが私の頭を撫でた。
「ありがとね、いっつも」
「まだ食べてないのに?」
「んじゃ早く食べよー」
私の背中を抱き締めながらリビングに入った隆二さんは「あ!ロールキャベツ!」とテーブルを覗き込む。
「こんな暑い日にどうかと思ったんですけど、隆二さん好きって言ってくれたから……」
「好きー。ナイフ要らないロールキャベツAが作ったので初めて食ったもん」
屈託のない彼の褒め言葉に、私は後ろ手を組んでモジモジしてしまう。
「早く食べたい。手洗ってくるわ」
「うん」
冷蔵庫から冷えたグラスを出し、テーブルにセッティング。
「隆二さーん!ビールとワインとシャンパン用意したんですけどどれが良い?」
手を拭きながら洗面所から戻ってきた隆二さんは「ん?全部」と席についた。
「全部……」
明日移動日なのに?と思いながらも、私はワインクーラーにお酒の瓶を3本入れた。
「はい!じゃあ!」
向かい合って座り、私たちは手を合わせた。
「「いただきます」」
誰かと食べる食事は、一人で食べるよりずっとずっと美味しい。
本当に美味しそうに見事な食べっぷりを見せてくれる隆二さんが居ると尚更。
「お魚、取り分けますか?」
「うん。俺がやったら悲惨なことになりそう」
私は笑いながら魚の半身を隆二さんのお皿に移し、ソースをかけた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時