友情を信じて。 ページ10
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翌日、昼過ぎに起きてきた純奈は、部屋から出てくるなりソファに座っている私を怒鳴り付けた。
「ちょっとあんた!」
「はい」
「何があったわけ!?帰ってきたらキッチンは料理の途中だし自転車は家の前に停まってるし、そこの路地で陽ちゃんとすれ違ったのに無視されたし!」
「はい」
「私が居ない間に何があったの!?……って言うか……何食べてんの?」
「シリアル」
「見たら分かるけどさ……シリアルって牛乳とかヨーグルトかけて食べるんだよ?そんな、箱に直接手ぇ突っ込んで食べる物じゃないよ?」
「知ってる。でも私にはこれで充分。牛乳とかヨーグルトとか勿体ない」
私はシリアルの箱に手を突っ込み、鷲掴みにしたそれを口の中に放り込んだ。
「……A?どした?」
「私、最低なの」
「え?」
「人間失格」
「えっと……え?」
「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからで、」
「……オッケーオッケー!あんた東北出身じゃないし地下鉄通ってるとこで生まれ育ってるし一旦太宰先生はお休みしてもらおうか」
「はい」
「さっきから素直!」
純奈は呆れたような溜め息をつき、私の隣に座って肩に腕を回した。
「どうしたの本当に。一昨日から普通じゃないよ?」
「……昨日、隆二さんにもう会わない方が良いって言ったの、私が」
「どうして?」
「写真、撮られたから」
純奈は、私の話を遮ることなく、ただ相槌をうって聞いてくれた。
「それで、昨日の夜、陽ちゃんがうちに来た」
「私が頼んだからね」
「陽ちゃん、私のこと……好きでいてくれたみたいで」
「……え?」
「優しくされて、私、陽ちゃんと寝ようとした」
純奈の相槌がピタリとやんだ。
「でも、隆二さんのこと思い出して、出来ないって泣いた。服も脱がない状態で泣いたの、ずっと」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時