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「今夜、電話くれたのも嬉しかったです!」
「今日来てくれたら電話しようって決めてたもん……結構悩んだけどね、もう彼氏とかいんじゃね?って思って」
「でも隆二さんしてくれた。嬉しかったです本当に。だって電話してくれなかったら……」
照れてその先が言えない私の代わりに、隆二さんが「今こうしてない」と言って微笑んだ。
「そ、そうです!」
隆二さんは照れたようにキャップのつばを触り、コーヒーにミルクを足す。
何度言っても足りないくらいの“嬉しい”と“ありがとう”を私が言う度に、隆二さんは顔をクシャッとして笑ってくれる。
優しい瞳も、何気ない仕草も、いちいち私をキュンとさせた。
「岩ちゃんと臣くんにもお礼しなきゃですね。私、二人の連絡先教えてもらってたのに、」
「え?」
飲もうと持ち上げたカップを、隆二さんがテーブルに置いた。
「なに?なに?何で二人の連絡先?」
「岩ちゃんが、会社に電話してきてくれて……」
「いつ!?」
………あれ?
隆二さん、知らない感じ?
言って良かったのかな、これ。
「いつよ!?」
「えっと……」
私は頭の中で、部屋のテーブルに置いてある瓶の中のメモをガサガサとかき回した。
「4月……4月3日です!」
「すげぇ正確だな!」
「はい!Mステの前日でした!」
隆二さんは自分の記憶を辿るように視線を宙に浮かせたあと、その視線を私に下ろした。
「連絡先、渡しに来ただけ?」
「ううん。あの……写真を」
「写真?」
「例の……」
私はカメラを構える仕草をして、人差し指でシャッターを押す真似をする。
「良い写真でしょって、忙しい中見せに来てくれたんです」
「岩ちゃんが?まじで?」
隆二さんは椅子の背もたれに体を預け「そうなんだ……」と何か考えてるみたいに黒目を動かした。
「隆二さんは……写真見ましたか?」
「うん、見た。よく撮れてるなぁって思った……変な感想だけど」
「ううん、私も思いました」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時