恋。 ページ42
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公園を出たあと、私たちは朝の4時までやっているあのカフェに行くことにした。
長い長い抱擁のあと、お互いこのまま離れたくない気持ちはあったけど、だからと言ってこの時間からどうして良いか分からなくて。
カフェに誘ったのは隆二さん。
“ドームに誘った場所だし何か良いじゃん”と笑う彼に私も微笑んで頷いた。
深夜にも関わらずクッション席は埋まっていて、テーブル席に案内された私たち。
あの日と同じブレンドを注文し、2つのカップからは同じ早さで湯気が立ち上っている。
「隆二さん、大丈夫ですか?」
「何が?」
「ライヴのあとで疲れてますよね?明日もあるし……って呼び出したの私なんですけど」
「大丈夫。あんま気にしないでそういうの。ダメなときはダメって言うから」
私は小さく何度も頷き、カップに唇をつけた。
「今日さ、楽屋に来ないの何となく分かってた」
「どうして?」
「何でかなぁ……何かそんな気がしてた」
やっぱり、隆二さんは私のことはお見通しなのかもしれない。
「だから頷いてくれたんですか?楽屋でお話出来ないから、全部分かってるよって意味で」
隆二さんはテーブルに肘から先を置いて、熱そうにコーヒーを飲んでから「……分かんね」と呟いた。
「え?」
「何で頷いたか分かんない」
「……へ?」
本当に?って思ったけど、何だかそんなところも隆二さんらしくて私はつい笑ってしまう。
「でも嬉しかったです私。隆二さんが約束覚えてくれてたのも……チケットがポストに入ってた日、すごい雨で」
「そう!あれまじビビった。行けるっしょーって事務所から出たら目黒川ゴーゴーしてるしさぁ!」
「そうそう!」
「やばいなって思ったんだけど、そこで帰ったらダメな気がして……何て言うか……今日届けないとライヴ来てくれなくなるような気がしてね」
「そっか……そうだったんですね」
あの封筒に、雨のあとは一切付いていなかった。
あの雨の中、隆二さんが大事に抱えて運んできてくれたんだと思うと胸がじわっと暖かくなって、目の前に居る彼が益々愛しくなる。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時