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「ごめんね、隆二さん……もう会わない方が良いって言ったのに、私から会いたいって……」

「ううん」

「ポストにチケット入ってたとき、びっくりしました」

「ごめん……」

「でも嬉しかった。今日のライヴもすごくカッコ良かったです。隆二さん頷いてくれたでしょ、何か泣けちゃって」

「ごめん……」

「電話かかってくるまで会うの我慢できるって思ってて。でも、声聞いたらね、」

「ごめん、好き」

隆二さんが私の右手を強く掴んで引き寄せ、

痛いくらい私を抱き締めた。

酔って抱き締められたときとは比べ物にならないくらい、

強く、きつく、優しく、私を抱き締めた。

しなやかな隆二さんの腕に抱かれ、その胸から彼の声が聞こえてくる。

「あの日……もう会わないって決めた日、好きだって言おうと思ってた。でも言えなかった。好きだから言えなかった」

好きだから嘘をついたのは、

私だけじゃなかった……。

「私……私も嘘つきました」

「分かってる」

出会った夜、私たちは笑って過ごした。

だから今夜も笑って会おうと思ってたのに

「私で良いんですか……私、隆二さんの前だとわがままになるんです」

「良いよ」

「甘えたくなります……」

「良いよ」

彼の全てに涙が溢れる。

「私、後ろ向きに考えちゃうんです……こんな風に好きって言ってもらってるのに、私で良いのかなって考えて……」

涙声だから、ちゃんと伝わってるかも不安になって

「私、そういう自分があんまり好きじゃなくて……」

「じゃあ俺が、その分好きになるよ」

誰かに好きだと言われて、こんなに泣いたのは初めてでした。

泣きじゃくる私の髪を、隆二さんの手が優しく撫でます。

「……返事は？」

「す、好き、です」

泣きじゃくってるせいで随分下手くそになってしまった私の“好き”を、隆二さんは可愛いと笑い、

泣き止むまでずっと、ずっと、抱き締めてくれていました。

それはまるで、

二人の空白を埋めるような、長い長い抱擁でした。