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「最低なの俺でしょ。傷付けたよね……ごめん」
「何で私が傷付くの!?」
「いや、だって、ほら……」
「あれは、同意の上だもん。それに……ほら……」
「……キスもしてない」
「そ、そう。ちょっとこう……体が乗っかった感じ」
「……でも、やっぱりさぁ」
「陽ちゃんは?」
「え?」
「陽ちゃんは……傷付いてない?私のせいで嫌な思いしたよね」
「してない。多分、最後までいってた方が傷付いたかも。自分にね。嫌悪感みたいな」
「そっか……」
「だから、何て言うか……」
「………」
「………」
「「……お互い様?」」
私たちは顔を見合わせて、どちらからともなく笑い出した。
「ありがとう、声かけてくれて。本当は俺から連絡しなきゃだったのに」
「ううん」
「……あの人とは?あれから……どうなった?」
「あのまま。でも今日ね、良いことあった。何か……前向きになれそうなこと」
風で乱れる髪を押さえ付け、私は東京タワーを見た。
「私、隆二さんとのことがあってから凄く辛かった。彼のこと忘れようとしてたから」
早く忘れなきゃ、早く忘れなきゃって思ってた。
でも、無理矢理忘れても、それはいつかまた顔を出して私のことを泣かせるはず。
「だからね、忘れるのやめた。そしたら何か胸がすーっとしてきた」
「会いに行くの?」
陽ちゃんの質問には答えず、私はまた波に視線を落とす。
「私、隆二さんに何もしてあげられなくて……だからせめて、応援しようかなって。隆二さんの夢」
「夢?」
「うん、夢。陽ちゃんの夢は?やっぱり自分のお店出すこと?」
「そうなれたら良いよね。その時はAちゃんに設計頼むわ」
「良いの?うち、デザイン料めちゃめちゃ高いよ?」
「……まけてよ」
「じゃあ、まけられるように私もグイグイ出世するね」
船がお台場に着いた。
「ねぇねぇ、麻布のお店、いつオープン?」
「来月」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時