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「……良い写真でしょ」









岩ちゃんの言葉に頷いた私は、写真をそっと膝に置き、それをじっと見つめる。









「このカメラマンさん、凄く上手ですね……雨がキラキラして背景がちょっと滲んだみたいで……私たち、笑ってる」









二人の時間は終わったのに、









写真の中の私たちは今も幸せそう。









「ほんと……悔しいくらい良い写真です」









ボタボタと、音を立てて涙が写真に落ちた。









写真の中の雨だけが浮き上がってきたみたいに見えて、余計に涙が出てくる。









「ほら、みんなで舞浜行ったじゃん。あのときも隆二さん、うつ向いてるAちゃんのことずーっとチラチラ振り向いてたんだよ?」









「うん……」









涙で返事が出来ない私に、岩ちゃんは優しく語りかける。









「東山のお店に呼び出した夜も、呼ぼうかなぁ?しつこくしたら嫌われるかなぁ?って隆二さん悩んでて。臣さんが痺れ切らして“うるせぇなぁ!連絡したら分かるだろ!”って。あれ可笑しかったなぁ」









頷く度、写真に涙が落ちた。









「……隆二さんは、ずっと一生懸命だった、Aちゃんに」









嗚咽が漏れそうになって、私は慌てて手で口を塞ぐ。









「……隆二さん、私のこと想ってくれてた……」









「そうだよ。笑顔が泣いてるみたいに見えるAちゃんが、本当に楽しそうに笑ってると嬉しいって……隆二さん言ってた」









西日が眩しい小さな喫茶店で、









私は人目も憚らず泣きました。









悲しいとか寂しいとか、そういう気持ちじゃなくて









初めて触れることの出来た隆二さんの気持ちが温かくて









隆二さんは、とても良い仲間に囲まれてるんだなと感じることが出来て









優しさに涙が出てきます。









「岩ちゃんごめんなさい、泣くつもりじゃなかったんですけど……」









「うん。大丈夫。俺、そこの窓から見える桜見てる。お花見出来なかったから丁度良かった」









岩ちゃんは、ただ静かに、炭酸の泡がなくなるまで









私が泣き止むのを待ってくれていました。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時

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