一葉の想い。 ページ15
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仕事が終わる時間に合わせて岩ちゃんと約束をした私は、会社の近くの小さな喫茶店で待ち合わせをした。
私の個人的な連絡先を知らない岩ちゃんは、会社の名前を検索して番号を知ったのだと言う。
「────岩田と申しますがって名乗ってAちゃんの名前言ったらさ“少々お待ちください”ってすぐ繋いでもらえたからビックリしちゃったよ」
「今、同じチームに磐田さんって方がいるんです。しょっちゅう連絡してるので“イワタ”って響きで繋いでくれたんだと思います。でも……確認しなきゃですよね」
苦笑いする私に、岩ちゃんは「でも助かった」と微笑んだ。
「ご用件は?って聞かれたらどうしようかと思って……隆二さんに名刺見せてもらってて良かった」
“隆二さん”という台詞に、私の胸が微かに痛む。
「ごめんね、仕事終わりで疲れてるでしょ」
「いえ!こちらこそ、わざわざ近くまで来ていただいて」
「今日位しか時間がなくて。明日からメディアラッシュってやつ」
「大変そう……」
笑顔で頷いた岩ちゃんは水で喉を潤したあと、薄いカーテンがかかっている窓の方を見た。
「今日はね……別にね、考え直して欲しいとか、隆二さんに連絡取ってくれとか、そういうこと言いに来たんじゃないんだよ」
「はい……」
「ただ、ほら、縁って言うのかな。新年会で俺がAちゃんに絡まなかったら、知らない同士だったかもしれないじゃん、俺たち」
「はい」
「人との縁は大事にしないといけないなって」
岩ちゃんはそう言って、重そうなバッグから大きな封筒を取り出した。
「これ……見て欲しくて」
「……拝見します」
私は封筒を手に持ち、中にそっと手に入れて────
慌てて元に戻した。
「岩ちゃん……これ」
チラッと見た封筒の中には写真が入っていて、
それは恐らく、誌面に載るはずだった“あの朝”の写真。
「どうしたんですか!?これ」
「これさぁ、事務所の会議室のテーブルの上に置いてあったんだもん。隠したいのか見せたいのかどっちだよ。なぁ?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年9月16日 14時