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「……そこまでなるくらい好きだった人に自分からもう会わないって言ったんだもん。相手の為に。ちょっとくらいおかしい行動したって良いじゃん。誰が責められるの」

ザクザクと音を立ててシリアルを食べる純奈の横顔を、私は黙って見つめた。

純奈なら、どういう決断をしただろう。

好きな人の夢と自分の愛情に、どう折り合いをつけただろう。

「取り合えず、食べたらどっか行こうよ。ここに座ってても変わるのはテレビの番組だけだから」

「うん……」

「どこ行く？あ！船は！？A船好きじゃん！何だっけ？ホタルナ？」

「あの船には、もう乗れない」

「何で？」

「陽ちゃんに会っちゃうかもしれないから」

「あぁ、そっか……じゃあショコラ飲みに行こう！」

「フレッシュネスは色々思い出しちゃうし……大好きだった。船もショコラも大好きだったのに……」

「……大好きだったのは、それだけじゃないでしょ」

純奈の言葉に、私の目からまた涙が出てきた。

膝を抱えて泣き出した私を、純奈が「よしよし」と抱き締めてくれる。

「純奈、私……おかしいよね」

純奈は私の質問には答えず、ただ小さな声で「大丈夫」と笑って見せた。

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隆二さんとの一件から３日。

傷はまだ癒えないけれど、それでも朝陽は昇ってくる。

“新入社員研修中”の紙が貼ってある会議室を横目で見ながら、私はフロアに入り休憩スペースに腰を下ろした。

胸の中にモヤモヤしたものはまだあるけど、会社に来れば泣いてる暇はない。

ちゃんとしてるように見られるように、自然と背筋も伸びる。

新入社員が入り、私には後輩が増えた。

「頑張ろ……」

“悩み事のある人は後輩の指導免除”なんて規約があるわけじゃないし。

テーブルのすみに置いてあるお菓子BOXからチョコレートを１つ取り、お金を入れる。

製菓会社が展開しているオフィス用のお菓子BOXは、さながら“薬箱”。

食べたら食べた分だけ補充してくれるシステムで、社内のみんなが虜。