鮮明な記憶。 ページ9
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「純奈は！？もう出勤してるよね！？」
翌朝、福岡から東京に戻り現場会議を終えて会社に戻った私は、事務の子に純奈の居場所を訪ねた。
「昼には東京戻ってるはずなんだけど！」
「え、純奈ちゃん？純奈ちゃんはラボの会議出てるよ」
「ラボ？……あぁ！そうか！今日月曜だもんね！そうだったぁあぁあ！」
「な、何か急ぎ？呼び出しかけようか？」
「いや……大丈夫…」
「……大丈夫？本当に？」
「本当に……あ、これ福岡行ったお土産。ベタでごめんね、にわかせんぺい」
「おー！ありがとう！ライヴ行ってたんだっけ？」
「うん……ライヴに……」
お土産の袋を受け取った彼女は、にわかせんぺいの箱を目元に当てた。
「Aちゃん、今こんな顔してるよ」
「え……本当？あの……私、今からまた外に行かなきゃいけないんだけど……純奈に今夜は早く家に帰ってきて来るように伝えてもらって良い？」
「分かった」
ポストイットにメモをした彼女に「宜しくお願いします」と伝え、私はロッカーで着替えをすることにした。
ずらっと並んだ縦長のロッカー。
自分の場所に鍵を差し込む。
────途端に、昨夜のことを思い出した。
左手で持ったホテルのカードキーを、ドアノブの下にある平たい隙間へ入れた隆二さんの手つきや、
カードを引き抜いた時に聞こえた中の金具が外れる音までも。
「はぁ……」
うつ向くと、自然とため息が出た。
一体、何のため息？
きっと……今朝別れたばかりの彼の影が、脳に濃いしみのように残っているから。
リアルな恋をすることなんて、ないと思っていた人の影が────
.
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.
「ただいまー！」
リビングに居た私は、純奈の声に急いで玄関まで走った。
「おかえり！」
「あれー？元気じゃん」
純奈は靴を脱ぎながら、私の顔を訝しげに見た。
「早く帰ってこいって伝言もらったからさ、てっきり体調でも悪いのかと思ったよ」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
