No.1510。 (ページ46)

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「嫌なんじゃなくて」

“フリスクの正しい出し方教えてやったじゃん”

どうしてくれようか、この酔っ払い。

“まぁ、また詳しいこと連絡するから。来てね”

「え！？」

“あ！アルバム聴いてくれてありがとう。おやすみー”

「……おやすみなさい」

切れた電話を手に持ったまま、私はベッドから起き上がった。

丸い窓の中に、口元が綻んでる私が映り込んでいた。

そして────

北陸新幹線が開業し、新国立競技場の建設計画をゼロベースで見直す事が決定、

ガウチョパンツ、オールホワイト、おフェロメイクなるものが流行った2015年。

元日から、私はパニックを起こしていた。

「純奈！決めてよ！どっちのワンピースが良い！？」

「えー？ネイビーじゃん？ネイビー嫌いな人いないよね」

ソファに寝っ転がったまま、純奈はテレビに夢中。

「ちゃんと見てよぉ。髪は？巻いちゃったんだけどストレートが良かったかな！？」

「この際、切る」

「やってないから美容室！」

「おいおいー、肩の力抜いていこうぜー」

約束の時間は迫ってるのに、着る服さえ決まらないなんて。

「……そうだね、肩の力抜いてデニムで行く」

クローゼットからスキニーとギャルソンの黒いニットを引っ張り出し急いでそれに着替えた。

１度は巻いた髪を大きく編み込みにし、それを無造作にまとめあげ額は出した。

“8時は？どう？俺、店に居るから”

低く流れる隆二さんの声を思い出して、メイクする手が何度も止まる。

気合いを入れるみたいにアイラインを跳ね上げ、唇はグロスだけにした。

手首に香水をふりかけ「行ってくるねー！」とリビングに声をかける。

「いってらっしゃーい。何かあったら電話してね。迎えに行ってあげるから」

「ありがとう。心強いです」

新作のマノロに足を入れ、玄関に置いてある木製の万年カレンダーを“12月31日”から“1月1日”に動かした。

────2015年の幕開け。

この年、隆二さんと私の恋は

大きく舵を切ることになる。