No.1510。 (ページ43)

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ゆく恋、くる恋。ページ43

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────12月25日を過ぎた瞬間から、街は年末へと一気に流れていく。

テレビでは執拗に１年を振り返り、店内のBGMや飾り付けが変わり、年末年始に必要な食材の値段が上がりに上がる。

でも私は、この忙しない空気感が結構好きだ。

みんな良かったことも悪かったことも、その年の出来事をワシャワシャと洗濯してるような気になるから。

「よし」

部屋の丸い窓を拭き終わった私は、バケツの中で雑巾をギュッと絞った。

“大掃除”という程でもないけれど、普段手をつけていない場所を念入りに。

部屋の中には、三代目のアルバムが繰り返し繰り返し流れている。

ベッドの下に潜り込んでフローリングを拭きながら、隆二さんの声は良い声だなぁと思う。

声を聞けば、顔が浮かぶ。

顔が浮かべば、会いたくなる。

会いたくなったからと言って……会えるわけもなく。

掃除が終わったらまたDVDを観ようとベッドの脚を拭いていると、カチャっと部屋のドアが開く音がして、

「ぎゃっ！」

と、純奈の叫び声がした。

「なに！？純奈どうしたの！？」

私はベッドの下で友人の身を按じ、大きな声を出した。

「なんだー！A生きてんのかー！ベッドの下で死んでんのかと思った」

「何で暮れの忙しい時期にわざわざベッドの下で死ななきゃいけないの！」

私は匍匐後進をしながらベッドの下から這い出た。

「どうしたの？掃除終わった？」

「大体。今洗濯終わった」

裏庭に面した窓を覗くと、太陽の光をすべて遮ってしまうほどの量の洗濯物が風に揺れているのが見えた。

「で、私の洗濯物に混じってたから持ってきた」

純奈の手には、畳まれたブラジャーが１枚。

「あ、ごめんね。ありがとう」

「黒のレースなんて着けて誰と何するつもりー？」

「一人で“あぁ今月もオーバドゥの下着が買えた！頑張った！”って悦に入るつもりー」

純奈の手から引ったくったそれをチェストにしまい、私はまたフローリングを拭き始める。