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「……違うよー？それに私、健太郎くんが三代目のライヴに関わってるなんて知らなかったもん」
二人を会わせるために福岡のライヴを選んだのは図星。
でも、健太郎くんの会社が三代目のライヴを請け負っていたのを知らなかったのは本当。
でも結果的に良かった。
純奈が健太郎くんの仕事ぶりを目にすることが出来たから。
「しかし意外だなぁ」
「何が？」
「Aが良いなぁって言ってたのって、ボーカルの向かって右の人だよね？」
「そう！向かって右の人。えっと……誰だっけ？」
私はフライヤーに載っていた顔を見て「あ、そうそう今市隆二さん」と名前を改めて確認。
「意外だわー。Aって綺麗系の顔が好きなんだと思ってた」
「……今市隆二さんの顔が綺麗じゃないって？」
「いや、どっちかって言うと……ワイルド？いかつい？じゃん？」
「あぁ、そっか」
「だから意外だなぁって」
「そうかなぁ？けど、顔じゃないよね。歌うたってるんだから顔は関係なくない？声だよ、声」
「まぁそうだよね。大体、芸能人はほとんど二次元の人だもんねー。リアルなタイプとは違うか」
「そうそう、リアルとは別物」
リアルな世界で誰か気になる人が出来たとき、私たちはその人の中身を観察する。
喋ったり、食事したり、周りの人からの評判を耳にしたりしてその人の人間性を知りたいと思う。
でも、私は今市隆二さんのプライベートも本当の人間性も知りたいとは思わない。
テレビの向こう側に居る人に対しての“好き”は、結局のところ“憧れ”と“幻想”だ。
こんな人が身近に居たらなぁなんて妄想したりするのは、自分の身近に来てくれる訳がないと痛いくらい分かっているから。
今市隆二さんは、ひょっとしたら冷徹な人間かも。
ひょっとしたら女性関係が激しいかも。
でも、だとしても私には関係のないこと。
今市隆二さんは向こう側の人だから。
ステージで夢を売ってくれたらそれで良い。
彼にリアルな恋をすることなんて、ないんだから。
「替え玉しちゃおっかなー」
「Aいくねー」
「いくよー？」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
