近くて遠い人。 ページ39
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「ねぇ、それどうしたの」
会社のデスクの上に山盛りになっているタブレットを見て、純奈が顔をしかめた。
「純奈、知ってた？タブレットって右手で持つとちゃんと出るの。ほら」
「知ってる……って言うか左手で持たなくない？」
「私は持つ」
「あ、そっか……んで、それ何？」
「昨日ね……隆二さんと居た、私」
「………は？」
「だからね、隆二さんと居たの」
「……ちょっとどーなってんのよ！！」
純奈の声があまりに大きくて、フロアの視線が一斉にこちらに向けられる。
「ど、どーなってんのよ！この施工図！」
“あぁ、施工図か”と、みんなの視線が離れたところで、純奈が椅子ごと私に近付いた。
「何で？何でイヴに右の人と居るの！？」
「あの……話すと長くなるんだけど」
一体、どの段階から話せば良いのか。
私は23日からの流れを事細かに純奈に話した。
「で、クリスマスディナー食べて……」
「いやぁ……クソ寒い現場から戻ってきたばっかだけど体が熱いわ私」
作業着の胸元をパタパタさせて、純奈がまとめていた髪をほどいた。
「って言うかさ、何で今言うの？もう25日だよ？あ、メリークリスマース！」
「メリークリスマース……」
「Aさぁ、ほうれんそうだよ、ほうれんそう。報告、連絡、相談。あんたいっつも“ほう”だけ。“れんそう”がないの」
「“れんそう”したいときに純奈はいっつも健太郎くんと居るじゃん……」
「気にしないで連絡してきてよ！」
「出来ないよ。邪魔出来ない」
「付き合って5年が経過したカップルに邪魔とかないし。ねぇねぇ、話し詳しく聞きたい。今日真っ直ぐ帰るよね？」
「今日は船に乗ってから帰る」
「船！？煮詰まってんの！？何で！？素敵なイヴを過ごしたあとで何故煮詰まるの！？」
「私……隆二さんのこと、好きみたい」
「ふぁっ！？」
「頭おかしいよね？よく知らない人のこと好きになるなんて、どうかしてるよね？」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
