No.1510。 (ページ36)

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中が半袖のTシャツなことに驚きながらも、私は隆二さんの支度が終わるのを待って「いただきます」と手を合わせた。

「わっ、美味しいですねこれ！」

「んー。うまい」

隆二さんは、とても美味しそうにご飯を食べる人。

“堪能”と言う言葉がピッタリくる。

スープ、お魚、口直し、お肉───

次々運ばれてくる料理を食べながら、私たちは“音楽以外の話”をした。

何故、ライヴに行こうと思ったのか
何故、それが福岡だったのか

もっと早くしなければいけなかった話を、たくさんした。

「その、三代目観た方が良いって言ってくれた子、何の職人？」

「鳶さんです。あ、鳶さんって分かりますか？足場組んだり、」

「分かるよ？」と隆二さんが笑った。

分かるんだ？と思った時に運ばれてきたデザートは、童心に帰った気分になる小さなクリスマスケーキ。

イチゴとベルの飾りが乗っていて、お皿には“MerryChristmas”とチョコで書いてある。

甘いものなんか食べそうにない面構えの隆二さんは、ケーキの半分に大胆にフォークを入れた。

「あのさ……ちょっと突っ込んだこと聞いて良い？」

「はい……」

「いつから付き合ってんの？」

「……え？」

私がフォークで掬おうとしたケーキが、コテッとお皿の上で倒れた。

「陽ちゃんと、いつから付き合ってんの？」

「……誰がですか？私がですか？」

「うん」

「……つ、付き合ってませんよ！？」

「え！？」

「え！？」

「そうなの？この間親しそうに喋ってたから……てっきり」

「仲良くはさせてもらってますけど、付き合ってはいません。陽ちゃん、彼女居るんじゃないですかね……今日居ないっぽいし」

「………なんだ」

ケーキの半分を口に入れた隆二さんは“おかしいなぁ”と言いたげに首をかしげた。

「……あ、ひょっとして私と陽ちゃんが付き合ってると思ってたからこのお店にしたんですか？」