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「うわぁ……」
夜を待って意気揚々と六本木まで出掛けたは良いけれど、けやき坂の辺りは一人で歩いている人を探す方が大変なくらいカップルだらけ。
寄り添う恋人たちの横をすり抜ける自分の姿がショーウィンドウに写り込んでいて、私はそちらに目を向ける。
足元で翻る黒いロングコートの裾が、隆二さんの瞳とダブって見えた。
私は頭に焼き付いた彼の瞳を振り払うように顔を上げる。
頭上には、冬の街を彩るイルミネーション。
灯りは、見ているだけで心が温かくなったり優しい気持ちになったり、元気をもらえたりする。
時間によって赤と黄色の“CANDLE ＆ RED”、青と白の“SNOW & BLUE”が点灯されるけやき坂。
紅葉のような色味も、樹氷のような色味もどちらも綺麗で「わー……」と思わず呟いた私の傍を
不審人物を見るような目でカップルが通り過ぎて行く。
……1人もんは、感想もおちおち言えないのか。
「はぁ……」
私は溜め息と同時に足を止め、来た道を振り返った。
歩道に、長く長く川のように流れる青と白のイルミネーション。
綺麗だけど、何故だか寂しい。
何でこんな気分になるんだろう？と首を傾げ、私はまた笑顔が溢れる道を歩き出す。
純奈は今頃、健太郎くんとホテルでディナー。
友達のあの子とあの子もデートで、あの子は家族と。
“1人”が寒さと一緒に染み込んでくる。
もう、帰ろうかな。
そう思いながら悴む手をコートのポケットに入れた瞬間、携帯が震えだした。
画面には見覚えのある番号。
「えっ」
私は握り締めた携帯を、そっと耳に当てる。
「……もしもし？」
“あ、もしもし”
それは、
私の内側を引っ掻いた隆二さんの声。
「ど、どうしたんですか？」
“聞きたいことあって。ほら、ホテルで言ってた輸入盤のCDのタイトル。何だったっけ？”
「輸入盤……あ！あれは───」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
