No.1510。 (ページ29)

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隆二さんが言った“約束”って、デートなんじゃないかな………。

「………何で彼女居るかどうか気にしてんの私」

独り言とコーヒーをマグカップに注ぎ、ふーっと息を吹き掛ける。

純奈にこの話をしたら、彼女は“A、気になってきてんじゃん右の人のこと！”って言うに違いない。

そして私はいつもみたいに“そんなんじゃないって“って答える────自信がない。

外で待ってた隆二さんを見て、私は凄く驚いたし、心臓が絞られたみたいになった。

それに……彼のあの瞳。

あの瞳に、肋骨の内側を引っ掛かれた感じがした。

ホテルの部屋で一晩中喋ってた時は感じなかったのに、昨日の彼の瞳は特別だった。

思い出すだけで、床暖房に寝そべったみたいに体がじんわり熱くなってくる。

この感じは“気になってる”証拠なのかな。

でも、私は会ってないときの隆二さんを想像出来ない。

私は今こうしてコーヒーを飲んでるけど、この瞬間に隆二さんが何をしてるかなんて全然想像出来ない。

それに、隆二さんのカッコ悪い一面も想像出来ない。

それは、隆二さんのほんの一部しか知らない証拠。

手に握り締めたままの携帯で“今市隆二”と検索すれば、彼のありとあらゆることを知ることが出来るだろう。

だけど、隆二さんのイメージが崩れるような情報は知りたくない。

好きならば、彼の全てを知りたいと思うはずなのに───。

「………考えるのやーめた！」

私はテレビのリモコンに手を伸ばし、電源を入れた。

テレビの中では、真っ白なコートを着たお天気お姉さんがフリップの天気図を説明している。

“残念ながらホワイトクリスマスにはならないみたいですねぇ”

その台詞を聞いて、私は画面の左端に表示されている日付に目を動かした。

「イヴかぁ……」

“六本木ではこの時期限定のイルミネーションが────”

六本木……

カップルで溢れているであろう場所に、単身乗り込むのも良いかもしれない。

シングルだからってイヴを楽しんじゃいけないこともないし。