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「……東京に、住んでたんだ？」
その台詞を聞いて、隆二さんは私がどこに住んでいるのかも知らなかったのだと今更気が付く。
「はい……ここに住んでます」
遠くの路上でクラクションが鳴った。
何かを、急かすように。
「待ち伏せみたいなことしてごめんね」
「いえ……」
「……して良いのかどうか迷ってて、電話。店で偶然会ったから声かけようかなって……」
だったらどうして、お店の中で声をかけてくれなかったの。
こんな寒い中わざわざ待たれたら……私、どうして良いか分からなくなる。
黙り込む私を見る隆二さんの眉に、戸惑いが翳った。
「ごめん。急にこんなことされたら嫌だよね」
部屋に呼んだのも、ゴミ箱からわざわざ捨てた紙を拾ったのも隆二さん。
電話してきたのも、私がお客さんだって知ったのに連絡取ろうとしたのも隆二さん。
でも、それを拒まなかったのは
私────
「あ、あの、隆二さん」
私はバッグの中から名刺入れを取り出し、そこから自分の名刺を１枚引き抜いた。
そして、両手でそれを彼に向かって差し出す。
「私……こういう……こういう者です」
隆二さんの細い指が名刺を受け取った。
彼は暫く名刺を見つめたあと、
「ありがとう。教えてくれて」
そう言って、口角を均等に持ち上げた。
あの夜と同じ、微笑む彼の目尻の優しいラインを見た途端、
私の頭に純奈の問い掛けが降ってきた。
.
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.
────“右の人のこと、好きなの？”
.
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12月23日
日向夏の果物言葉
“あこがれ”
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
