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「美味しくて飲みすぎちゃうかもしれないから、１杯だけで。果物の日向夏も結構甘め？」
「んー……知らない」
「そっか」と笑って最後の一口をれんげで掬った私の隣の隣。
「ごちそうさまでした」と隆二さんが席を立った。
シャンパンと、お肉の料理を一皿。
たったそれだけで満足するわけもない彼が早々に席を立った理由────。
きっと、私が傍に居るのが嫌だったからだろう。
レジにむかう為に私の後ろを通りすぎた彼の気配を背中に感じながら、心の中でため息をついた。
そんなに避けなくたって、私は隆二さんに危害を加えたりしないのに……。
こうやって、ちゃんと知らないふり出来てるのに。
どれだけ危険人物だと思われてるんだろう。
って言うか……ホテルの部屋に呼んだのも、ゴミ箱からわざわざ私が捨てた紙を拾ったのも隆二さんじゃん。
電話してきたのも、私がファンだって知ったのに連絡取ろうとしたのも隆二さんじゃん。
そっちが仕掛けたくせに、その態度って……。
残りのワインを飲み干して、私は「抹茶のフロマージュ下さい！」と大きく手を挙げた。
「え？食べるの？ダイエットは？」
「明日！明日からにします！」
声を出して笑ったシェフが盛り付けてくれたフロマージュを10分ほどで完食した私。
「美味しかったです！ごちそうさまでした」
支払いをしている最中「知り合い？」と陽ちゃんが私に聞いてきた。
「え？」
「三代目の人。知り合い？」
「……ううん。何で？」
「いや……店に入ってきたとき二人で“あっ”て言ってたからさ」
手のひらに乗せられたレシートとおつりの500円玉を財布にしまいながら、私は「そうだっけ？」と陽ちゃんに首をかしげて見せた。
「陽ちゃんの見間違いじゃないかな？」
「そう？」
「うん。あ、閉店までお仕事頑張ってね」
「そっちもね」
「うん、ありがとう」
私は勢いをつけてお店の外へと繋がる階段を駆け上がった。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年7月24日 22時
