No.1510。 (ページ3)

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ある夜の出来事。ページ3

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────2014年

通りに並んだ屋台の暖簾の隙間から、モヤモヤと湯気が立ちのぼっている。

その一角で私は友達の純奈と肩を寄せ、注文したラーメンが来るのを今か今かと待っていた。

「純奈、今日ありがとね。急にライヴ付き合ってもらっちゃって」

「ううん、誘って貰えて良かった！私、普段ライヴハウスばっかり行ってるからああいう大きい場所で観られて楽しかったよ」

「本当？良かったぁ。この間担当した現場に居た若い職人さんと音楽の趣味が一致しててね」

「Aと？」

「うん。で、その職人さんが凄い推してくるわけ三代目を。おまけに“三代目のライヴ行ったことないんすか！？”って言われて“じゃあ１回観てみよう”って」

「そういうことかー」

とは言え、私たちが観たのは単独ライヴじゃなくて一族のみなさんが大集合しているライヴ。

予習なんかしてなかった私には、今ステージに入るのが誰が誰だか分からずキョロキョロすること数回。

最近、邦楽にはCDでしか触れてなかったから、久しぶりにライヴを観て私も楽しかった。

「その職人さん、若いってどんくらい若いの？」

「17」

「それは“幼い”だね」

「はーい、お待たせー」

目の前に白濁のスープが入った器が置かれ、私たちは同時に鼻を近付けた。

「美味しそー……Aに誘って貰えたから本場のとんこつラーメン食べられるわ」

「よし、食べよ！いただきます」

「いただきまーす」

本場のそれは、一見くどそうに見えるけど、食べると意外にあっさりしていた。

程よくライヴで疲れた身体に美味しくて、私たちは夢中で麺をすする。

「んっ！そう言えば家の更新料振り込んでくれた？」

「振り込んだ振り込んだ！0.5ヶ月分で良いって言ってくれる優しい大家さんの元へ」

「ありがとう」

純奈と私は、ひとつ屋根の下暮らしている。

きっかけは就職したばかりの頃。

私が不動産屋さんの外壁に貼られた１枚の賃貸物件に一目惚れしたからだ。