No.1510。 (ページ16)

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30分くらい、そうしていたかもしれない。

ふと見た窓の外が白んでいて、部屋を出ようと立ち上がった時、ホテルの名前が印刷されたレターセットが目に入った。

私はそこに、自分の11桁の電話番号を書き込んだ。

書き込んだあと、

一体何を期待しているの？
これから先に何を望んでるの？

そう自問して、自嘲した。

「バカだよね私。番号書いて電話かかってくるの期待してるみたいでさ。純奈の言う通りバーカだよ」

「その紙、どうしたの？」

「何やってんだろって思って、手の中でクシャクシャにした」

「えぇー！残しとけば良かったのに！それだけ意気投合してたなら右の人だって連絡取りたいでしょ！」

「取りたいと思ったら朝が来る前に番号聞いてるって絶対。それに……隆二さん、私のこと関係者だと思ったままだしね」

「あ……」

「これで良いんだよ。“一夜限り”ってやつ。純奈には何となく早く言いたくて……ごめんね、時間もらっちゃって」

私はコロナの残りを一気に飲んで、瓶をシンクに置いた。

「先にお風呂使うね」

バスルームに入り、目一杯蛇口を捻ってシャワーを浴びた。

昨日のことを全て流すように。

体を洗い、ボディソープを流し終わったたところで純奈が「ねぇ」とバスルームのドアを開けた。

「Aに聞きたいことあるんだけど」

「聞きたいこと？今じゃなきゃダメ？私、裸でびしょ濡れなんだけどな」

「今じゃなきゃダメ。あのさ、好きなの？」

「へ？」

「右の人のこと、好きなの？」

私は濡れた髪をかきあげ、顔のしずくを手で拭う。

「何でそうなるの？」

「だって“良いなぁ”って思ってたんでしょ？」

「それはアーティストとしてだよ？しかも昨日初めてそう思った人だよ？」

「ふーん」

湯気の向こうの純奈が、首を大きく傾げた。

「私、右の人には彼女居ないと思う」

「どうして？」

「彼女居て、他の女の人をホテルの部屋に呼んだりしないと思う……何となく」

それだけ言うと、純奈はドアを閉めた。