雪椿の頃。10 (ページ10)

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────暫くしてインターホンが鳴り、料理を取りに行った隆二さんが部屋に戻ってきた。

「お待たせー」

顔だけ振り返った私は、隆二さんが手に持っている物を見て、思わず声を上げる。

「ポテトだ！」

笑顔の隆二さんが持っていたのは、山のようなポテトとボリュームのあるハンバーガー。

それをフローリングに置いた隆二さんは私の隣に腰を下ろし、空を指差した。

「ほら、夕日」

「あ……あのとき見られなかったから！？」

「そう。まぁ……東京の夕日だけどね」

隆二さんはそう言って笑いながら私の口にポテトを運ぶ。

私はそれを笑顔で食べたあと“お返しに”と隆二さんにポテトを“あーん”した。

「東京の夕日も、悪くないですよ」

見慣れたものも、二人の目に映ると特別なものになるから。

「退院おめでと」

「ありがとう、隆二さん」

コーラで乾杯をして、ポテトとハンバーガーを食べながら、私たちは夕映えに沈む東京を眺めた。

「またLA行こうな」

「うんうん！」

「またピア行って観覧車乗ろうな」

「……それは良いや」

「10回乗ろうな」

「……1回が良いな」