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隆二さんは「頑張ったね」と頬にキスをくれて、模造紙を壁に貼り付けた。
「これ、暫く飾っとこー」
「え、何か恥ずかしいです……」
「良いじゃん。俺らしか見ないんだし」
腕を組んで地図を眺める隆二さんの横顔を、濃くなり始めた太陽が照らしている。
とても綺麗な横顔を。
「……うん、此処だな」
じっと地図を眺めていた隆二さんが、地図のある場所に赤い点を打った。
「その点、何ですか?」
「これ?これは、いずれ此処に家買ってAと住む場所」
「え!?」
「オレンジカウンティって場所。治安も良いし、日本食のお店もあって────」
まるで、プレゼンテーションだった。
身ぶり手振りを交えながら、隆二さんはいかにそこが良い場所かを私に教えてくれて、
私はそんな彼が可愛くて愛しくて、ニコニコしながら見つめた。
「外せないのがニューポートビーチ!凄い綺麗なんだよなぁ……うん、此処が良い」
「行ってみたい。ニューポートビーチ」
「でしょ?……俺、語りすぎ?」
「ううん、ずっと聞いてたい。隆二さんの夢の話」
「違う、これは夢じゃなくて目標。夢じゃフワッとしすぎてる。だから目標」
不思議。
隆二さんがそう言うと、いつか本当にそこに住む気がしてくる。
「私で良いんですか……そこに一緒に住むの」
───隆二さんが地図から私へと、視線を移した。
.
.
「お前じゃなきゃ駄目だろ」
.
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“お前じゃなきゃ駄目だろ”
その台詞にポーッとしている私の目の前で、隆二さんは携帯をいじりだした。
「飯にしよ。デリバリー、すぐ来るからそこ座ってて」
「あ、あ、はい」
指定されたベランダとリビングの境に座り、私はベランダに向かって足を放り投げ、腕を伸ばした。
「んー!」
ちょっと張り切りすぎて疲れたかもしれない。
でも、充実感のある疲れ。
それに、とっても幸せ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時