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私が話すことを隆二さんは頷きながら聞いてくれて、たまに「正解」と頭を撫でてくれた。
「次の日、確か……この辺りのお店で隆二さんが“前に買い物した”って言ってましたよね」
「そう、服をね」
プロムナードで帽子を買ってもらったことや、食べ歩きをしたこと。
TIFFANYの前でピンチがあったこと。
そして、あの砂浜で隆二さんが指輪をくれたこと。
「……私、覚えてましたよね？全部あってましたよね？」
「うん。でも１個だけ間違ってる」
「嘘！？どこ！？」
私は模造紙をなめ回すように見た。
「ここ、最後のとこ」
隆二さんが指を置いたのは空港の写真。
「ここに“空港でバイバイするとき隆二さんはそんなに寂しそうじゃなかった”って書いてあるけど、俺寂しがってたからね？」
「……本当に？随分あっさり“バイバイ”って言ったなぁと思ってたんですけど……」
「違う。俺は寂しかった。ドラマみたいに抱き締めてキスしてやろうかと思ってた」
「してくれたら良かったじゃないですか……」
「空港まで送ってくれたスタッフがすぐ傍に居るのに出来るわけねぇだろ！」
「あ、そっか……」
憮然とした表情の隆二さんが、何だか可笑しい。
「と言うことで俺がここを書き換えまーす」
私の文章にマーカーでキュッキュッと音を立てて斜線を引いた隆二さんは、そこに“寂しがってた”と書き足した。
「これでよし」
「出来ましたね。思い出の地図」
「うん、出来た」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年5月23日 18時
