消えない面影。side R ページ20
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朝、ふと目が覚めて隣を見ると
「………あれ?」
“自宅に泊まります”と言っていたはずのAがベッドに寝ていた。
「……いつ戻ってきたんだろ」
ベッドの端っこにうずくまるように寝ているAを自分のほうに抱き寄せよると、彼女は俺の胸に額を擦り付けてきた。
「起きたの、隆二さん……早いね……」
「A。自分の部屋で寝なかったの?」
「んー……ちょっと楽しそうで、隣が」
「四季の部屋?」
「そう……二人が仲良しで私も嬉しかったんですけど……何か寂しくなっちゃって」
目を閉じたまま、Aは小さく欠伸をする。
「それで寝れなくて夜中にこっち来たの?」
「うん……だからまだ眠いの」
寂しくなって夜中に帰ってきた彼女も、ベッドの中でグズグズしてる彼女も、子供みたいで可愛い。
一生懸命に目を開けようとしている彼女の姿に、俺は暫く見入った。
「…ん?……隆二さん今何時?」
「12時」
「あー……行かなきゃ」
「どこに!?」
「事務所。留守電入ってたんです。私の退院祝いが事務所に届いてて、それが邪魔だから取りに来なさいって……昨日言って欲しかったー。何だかんだ連チャンで事務所行ってますよね私」
のそのそとベッドから起き上がった彼女は、眠そうに目を擦る。
涼しげなキャミソールのワンピースから覗く肩が、丸く光っていた。
「俺が取ってきてやろっか?どうせ夕方には事務所行くし」
「ううん、隆二さんに悪いから自分で行く。それに留守電は先輩からだった……私が行かないと」
「先輩からだと何かあんの?」
Aは両手で前髪をかき上げ、ちょっと困った顔をして俺を見る。
「先輩、私に当たりが強いんです」
「え、そう?ひったくり事件の時ヒーリンググッズ貰ってたじゃん」
「あれはイレギュラーな事態の時じゃないですか……同じミスしても、ちーちゃんとか四季はそんなに怒られないけど、私はガッツリ……。嫌われるようなことしちゃったかな、私」
「そーか?たまたまじゃね?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時