4 ページ33
・
「うっそー……良いの？高かったでしょ」
「全然！それ、パッと見バレンティノって分からないから、それも良いなぁと思って」
「マフラーのときと同じだ」
隆二さんはTシャツを胸に当てながら「あの時も衣装提供のこと考えてくれてた」と、懐かしむように微笑んだ。
「ありがとう。凄い嬉しい。ツアーのリハーサルで着よ！何か頑張れそうじゃない！？本当にありがとう……俺の語彙力どっか行ったわ」
「大丈夫です。充分伝わってます」
笑う私の肩をポンポンっと叩いて、隆二さんは「待ってて」とベッドを降りた。
そのまま部屋を出ていった隆二さんを目で追っていると、彼は数秒で戻ってきて、その手には見覚えのある黒い紙袋。
「はい、俺からもプレゼント」
「……ボッテガ」
両手で受け取った紙袋には“BOTTEGA VENETA”の文字。
つまり、これは……
「……え、カバ！？カバですか！？」
「そう。開けてみて」
「うそ……うそ、うそ、うそ」
紙袋の中から取り出したバッグは、取っ手が壊れて処分したあのバッグと全く同じ物だった。
「わー！！カバだ！」
「本当はさ、違うのにしようと思ってた。事件のこと思い出しちゃうかなって。でも四季と色違いで持ってたでしょ？だったらやっぱり同じのが良いかなぁって」
色も大きさも、全部同じ。
レザーの良い匂いがするそのバッグを、私はボフッと抱き締めた。
「嬉しい！でもこれ凄く高い……私、払い終わるまでに１年かかったのに……良いんですか……」
「良いよ。その笑顔見せてくれたから」
隆二さんはニコニコしながら私の髪を撫で、私は“もう良いから”と言われるくらい何度も彼にお礼を言った。
「ありがとう隆二さん！もう絶対誰かに取っ手掴まれたりしないようにします！絶対！絶対に！」
「宜しくお願いします」
「はい！あ、中身入れ替えても良いですか！？」
私は“仮”で使っていたバッグの中身を取り出し、真新しいカバに移し替えることにした。
「リップはもうなくさないように、ここ。あとは……」
「A」
「ん？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 948人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年5月23日 18時
