雪椿の頃。9 (ページ10)

今日:68 hit、昨日:32 hit、合計:401,177 hit

2 ページ10

・

満足気に去っていく先輩と入れ違いに「おはようございます」と四季がフロアに入ってきた。

四季も何か取り出すのかと身構えていると、彼女は私に向かって

手を合わせた。

「ちょっと、四季」

「あ、Aか。お菓子とかお供えしてあるからお地蔵さんかと思った」

「思ってないでしょ！？ねぇ！思ってないよね！？」

「ありがたや」

「四季！」

四季はケラケラ笑いながら私のデスクの上を眺めた。

「凄いね、いっぱい。それだけみんな心配してるんだよ」

「うん……何か逆に申し訳なくて」

「気にしなくて良いよ。今は自分のことだけ考えて」

「ありがとう。ごめんね、四季にも迷惑かけた」

「全然！電話もらってホッとした。岩田さんも安心してたよ、怪我が大きかったらどうしようって言ってたから」

やっぱり、四季と岩田さんは仲直りしたんだと思った。

とても自然に、四季の口から彼の名前が出たから。

「じゃあ、昨日は岩田さんと……一緒だった？」

四季は綺麗に微笑みながら私に頷いて見せた。

「そっか！良かった……四季と岩田さんが拗れたままだったらどうしようかと思ってた」

「ごめんごめん。こっちこそ心配かけたね」

「ううん！ねぇねぇ、岩田さん何か言ってた？私たちが隣同士になったこと」

「朝、隆二さんと出会したら気まずいなぁって言ってた」

「それ隆二さんも言ってた！」

「本当！？」

私たちはクスクス笑い、早く気まずい二人が見たいねと盛り上がった。

「あ、そうだ。私のせいで引っ越しのお祝い出来なかったなら日を改めてちゃんとやろうよ」

「うん！やるやる！Aの部屋で」

「私の部屋！？」

「だってうちの部屋まだグチャグチャなんだもん」

「わ、分かった」

私はお祝いの料理は何が良いかと考えながら、休憩時間に非常階段に出た。

「マフィンは絶対でしょ……あとは……」

「お！居た居た」