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お風呂を出て髪を乾かしたあと、隆二さんはすぐにベッドに入るように私に命じた。
素直に指示に従いベッドに潜り込むと、手足の先から疲れがジワジワと溶け出していく感じがした。
「はぁ……」
やっと“安堵”を得られた体が、脱力していく。
「ん〜……ベッド気持ちいい……」
「Aー」
寝室に入ってきた隆二さんの手には、ストローの入ったグラスが握られていた。
「あ、リンゴジュース!」
「喉乾いたでしょ」
ベッドの端に座った隆二さんからグラスを受け取ろうとすると、彼は手を引いて私からグラスを遠ざけた。
「え、くれないんですか」
「あげるよ?」
飲み口の部分を軽く指で押さえたストローを、隆二さんは私の唇に近付ける。
「はい飲んで」
ジュースくらい自分で飲める!と言いたいところだけど、隆二さんにわざわざ飲ませてもらうなんて今日を逃したら二度とないかもしれない。
私はストローを唇に挟み、隆二さんを見つめながら勢いをつけて吸い上げた。
「………」
「………」
お風呂上がりの隆二さんは、良い匂いがして髪がフニャフニャで、アクセサリーもつけてなくて、自然体。
仕事中のビシッとしてる彼も素敵だけど、こういう姿も大好きで……またこうして見つめられる日が来て良かったと心から思う。
「すっげぇ吸ってるし、すっげぇ見つめてくんじゃん」
ストローから唇を離し「かっこいいからです」と私が言うと、隆二さんは思いっきり目尻を下げた。
「照れるじゃん」
「その笑い皺も素敵」
「褒め殺しかよ」
「ううん、本当に。本当にかっこいい。あのね、その目元の、」
「分かった分かった!はい、ジュース飲んでー」
無理矢理ストローを喰わえさせられ、私はまた隆二さんを見つめながらジュースを吸い上げた。
「…………」
「…………」
「……見過ぎ」
「はい」
「ほら、寝るぞ」
「うん」
ベッドに入った隆二さんの胸に、私は頭を乗せる。
「電気消すよー」
「はーい」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時