3 side R ページ37
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握り締めていたAの手が微かに動いた気がして、ウトウトしていた俺はハッと目を覚ました。
「……A？」
夜明け前の静けさの中で、シーツが大きく膨らみ、Aの瞼がピクッと動く。
息をするのも忘れてその表情を見つめていると、彼女の目が小さく瞬きした。
ゆっくりゆっくり目を開けた彼女の瞳が、暫く天井をさまよったあと、
流れるように俺の方を向いた。
“俺だよ。分かる？”
すぐにでも確かめたい気持ちを押さえて、俺はじっと彼女を見つめる。
気を緩めればまたすぐに眠ってしまいそうなほど、彼女の瞼は重い。
「A？」
「……あ…」
薄く開いた唇から、小さな掠れた声が漏れた。
それは一瞬にも、永遠にも感じられる時間────
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「………隆二さん」
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彼女が、確かに俺の名前を呼んだ。
「分かるか？」
「……分かる…」
「覚えてるか……？」
「……覚えてる」
ゆったり微笑んだ彼女の目尻から、涙が流れた。
「隆二さんは……私の……大好きな人……」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年5月7日 19時
