2 side R ページ32
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握り締めていた携帯が鳴った瞬間、俺は慌てて電話に出た。
「もしもし?四季?手術終わった?」
“まだです……”
「まだ……」
予定では6時間の手術。
夕方の4時には終わる予定で、俺はその連絡を待っていたのに。
「何かあったの?」
“摘出に少し時間がかかってるみたいです。Aのお母さんと今一緒に居るんですけど……隆二さん、あとどのくらいで仕事終わりますか”
「1時間かな……終わったらすぐ病院向かうよ。四季は時間大丈夫か?夜、打ち合わせじゃなかった?」
“ギリギリまで居ます”
「分かった。何かあったら連絡してトミが俺の携帯持ってるから」
“はい。じゃあ……あとで”
「うん」
電話を切ったあと、暫く真っ暗な画面を見つめていた。
そして自分に言い聞かせる。
“時間がかかってるのは、悪いことじゃない”
「今市さん、移動です」
トミに声をかけられて振り向くと、
彼女は泣いていた。
「どうした?」
「Aさん大丈夫なんですか……」
「まだ分からない」
「私、Aさんの様子おかしいなと思ってたんです。四季さんの引っ越し祝いのときから。なのに、全然力になれなくて、私……あの……」
「トミ」
「はい……」
「Aに憧れてんだろお前」
「はい」
「じゃあ泣くな。Aはこういうとき泣かない。だからお前も泣くな」
唇を噛み締めたトミが、真っ赤な目を手で拭った。
「そうですよね。すみません……泣き止みます」
「……本当は俺も泣きたい。頑張ろ。Aも頑張ってる……な?」
「はい」
「うん。四季から電話あったら内容教えて」
「分かりました」
力強く頷いたトミの肩を叩いて、俺は現場へ移動した。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時