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どんなに唇を重ねても足りない夜。
隆二さんは、私の体のパーツひとつずつにキスを落としてくれた。
肩や背中、膝や足首にも。
部屋に流れる彼の歌声と息遣い。
混じり合う二人の香り。
「隆二さん……」
私を見下ろしていた彼が、動くのをやめて私の前髪をかきあげた。
「どうした?」
「私が眠ってから部屋を出てくれますか……眠るまで、傍に居て欲しい」
「分かった。傍に居る」
私はキスをせがんでから、目を閉じた。
────隆二さんが私を見つけてくれなかったら、
降り積もったあなたへの想いの上で、私は泣いてた、今も。
今、感じていることの全ては、思い出に変わる。
ちゃんと思い出に変わる。
二人だけの夜のこと、私は忘れたりしない。
隆二さん、私の名前をもっと呼んで
砕けるくらい、抱き締めて────。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時