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「隆二さんは明日朝早いから帰ったでしょー。四季が隣来てよー」
「しょうがないなぁー」
四季はニヤニヤしながら私の隣に横になり「変なの」と笑い出した。
「変かなぁ?良いじゃん」
「良いけど」
暫く二人で天井を見つめたあと、私は手を伸ばしてバッグを掴み、中から大きな封筒を取り出した。
「ちょっと見てほしいものがあって」
「ん?」
一見すると真っ黒いプラ板みたいな写真を封筒から引き抜き、私はそれを天井のライトに向かって翳す。
「これなんだけど」
「これ……頭部のMRI画像じゃん」
「流石!巨塔の娘!」
「そーごーびょーいん!ってか何でこんなもん持ってんの」
「これさぁ、ここの部分。腫瘍かもしれないって」
四季は目を細め「これが?へぇ……」と呟いた。
「……で、誰の画像なのこれ」
「………私」
「………は?」
「私。私の頭の中、これ」
「……え?何?冗談?笑えない」
「冗談だったら良いけど、そうじゃないの。明日、詳しく検査する。仕事も休む。検査して詳しく分かったら……四季のお父さんに見て欲しい」
「いや……待って。ちょっと……パニックになりそう」
「ごめん、急に」
四季の鼓動が速くなっているのが、腕を通して伝わってくる。
「5分ちょうだい。5分で落ち着く」
「うん」
それからきっかり5分で、四季は深呼吸した。
「そこの病院の先生には伝えてあるんだよね?だからその写真がここにある」
「うん。必要な書類も。先生に運が良いって言われちゃった」
「なんで?」
「こういうの、脳ドックとか本格的に症状が出てからじゃないと分からないって。それがたまたま……」
「念のためで受けた検査で分かった」
「そう」
「そして私の父が優秀な脳外科医なのも運が良い」
四季はそう言って、私の手を握った。
「朝イチで電話する。隆二さんには?」
「全部、決まったら言う。ちゃんと言う……嘘つかないで」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時