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1番の診察室に入った私は、看護師さんに促され丸い椅子に座った。
「☆さんですね」
「はい」
40代くらいだろうか?髪に白いものが混じり始めた、なかなか渋い先生が私に笑顔を向けた。
「先日のMRI検査の結果ですが」
私が普段使っているパソコンのディスプレイより2回りくらい大きな画面に、パッと画像が現れた。
「これが、その画像です」
自分の頭の中を、初めて見た。
何がどうなっているかは分からないけれど。
「転倒されたときの影響は特に認められませんでした」
「良かったです……安心しました」
「ただ」
先生が、画像のある一点を指した。
「ここ、分かりますか。白い部分」
「はい……」
「恐らく、腫瘍です」
「………え?」
画像を見るために少し前屈みになったまま、私は止まってしまった。
「良性か悪性かはこれから詳しく検査をしましょう。大丈夫です、どちらか分かれば適切な治療にすぐ取りかかれます。気になるのは、腫瘍のある場所です」
「場所……」
「最近、記憶がぼんやりすることありませんか?例えると……まだら模様みたいな。全体の中で、一部分だけ欠けていたり」
「一部分……」
“「数字、全然違うとこあるんだけど」
「え……」
「どうしたの?こんなミス」”
“「ねぇねぇ、このマグ使ってるよ、ほら見て」
「………何ですかその変なマグ」
「お前が買ってきたんだろうが!」 ”
“「隆二さんと最後にキスしたの、いつだったかなって……」”
“「聞いてくれた?」
「何を?」
「トミに!店の話!」
「あ、忘れてた!」 ”
────思い当たる映像たちが、突風のように私の頭の中を駆け抜けていく。
「先生……私、どうすれば良いんですか」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時