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「じゃあ料理は持ち寄りにしよ!Aはマフィン担当」
「私だけ作らなきゃいけないんだ……」
「何時にする?」
「あ、私夕方に病院行かなきゃなの。ほら、事件のときに頭打って怪我してないかの検査結果聞きに。だから……8時集合!どう?」
「「オッケー!」」
話が決まればあとは早い。
ちょうどミーティングを終えた隆二さんを捕まえて、私は引っ越し祝いの説明をした。
「───なので、料理はどこかで買ってきて欲しいんですけど……良いですか?」
「良いけど……何でお前の部屋なの?」
「四季の部屋まだ片付いてないんだって」
「ふーん」
隆二さんは納得いかないような顔をして片眉を上げた。
「四季の部屋、片付いてないのにやる場所はあんのか?」
「や、やる場所……」
「そーだろ?段ボールでベッド作った?それともキッチン?あの二人は奔放だな」
「そ、それはよく分かりませんけど……」
「まぁ良いや。8時ね、遅れないようにする」
「はい!」
隆二さんは辺りを見渡してから、私に小さくキスをした。
「うん、今日も綺麗。じゃあね、あとで」
「はい……あとで」
唇の感触と、甘い残り香───
羽が生えて、どこかに飛んで行ってしまいそうだった。
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人もまばらになった夕方の病院で、私は案内図を見上げていた。
大きな病院は、まるで巨大迷路。
「東棟、3階……」
脳外科のフロアまで2、3度迷いながら辿り着いた私は“1、2、3”と番号が書かれた診察室の前に腰を下ろした。
ひったくりにあった時、頭を打った記憶はない。
ただ、こういうのは後から検査を受けてもダメらしい。
事件によって起こった外傷だと証明が必要になるそうだ……何だか、とってもややこしい。
ボーッと椅子に座っていると、頭上の掲示板に私の番号が表示された。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時