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「四季!聞こえてんだろ!」
「ちょっとちょっと!ダメだって!」
隆二さんのTシャツを引っ張ると、彼は弾みで後ろに倒れベッドに仰向けになった。
「すげぇ力。そりゃ取っ手も千切れるわ」
「だから、私結構タフなんです」
私たちは微笑みを交わし、しばらく見つめ合ったあと、どちらからともなくキスをした。
気がつけば私が仰向けになっていて、隆二さんは鷲掴みのように私を抱き締め、首や肩に何度も唇を落としてくる。
「それくすぐったい!ねぇねぇ、こういう時も過保護なの?」
「そう」
唇のくすぐったさに身を捩る私に、隆二さんは「何して欲しい?」と尋ねた。
「……隆二さんの好きにして」
彼はさっきまで私をくすぐっていた唇に笑みを浮かべ、おでこをくっつけてきた。
「そんなこと言われたら……久しぶりだし優しくしてあげられないかも」
「良いよ……」
彼の瞳に、鳥肌が立つほどの色気が宿った。
「A」
名前を呼ばれ、噛み付かれるようなキスの最中、
「好きだよ」と彼が囁く。
体中、彼に埋め尽くされて
幸せな、夜だった。
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翌朝、バタバタと支度をして隆二さんと部屋を出ると、
「「あっ」」
隣の部屋から岩田さんと四季が出てきた。
「「………」」
「「………」」
「お、おはよう四季。岩田さんもおはようございます」
「おはようA」
「おはよう岩ちゃん」
「おはよう隆二さん」
「おはようございます隆二さん」
「おはよう四季」
多重音声なあいさつを済ませ、私たちは4人でエレベーターに乗り込む。
「………」
────何故、誰も喋らない。
きっとお互いこう思ってるからだ。
“こいつら、昨日やったな”
居心地の悪さを感じながらマンションを出た私たち。
“じゃあね”と別れたいところだけど、私たちの行き先は全員“事務所”
4人、無言で一列に並んで歩道を歩く。
「……な、なんか集団登校みたーい!」
「「「A、黙って」」」
「はい……」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月7日 19時