マジックアワー。side R ページ43
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「分かった?行きたいとこあったら俺にまず連絡しろ」
「はい……」
俺の説教はバスルームの中でも続いていた。
「コーディネーターの人が良かったら彼女のアテンドしますよって言ってくれてるんだから」
浅くて広いバスタブの中から、Aの小さな膝が覗いている。
「んー……でも悪いですよね。だって隆二さんのお仕事に関わってる人なのに……」
Aは困った顔をして手でお湯をすくい、俺の肩にゆっくり流した。
「大丈夫ですよ?危ないとこには行かないし、今回だってツアーじゃなかったら行かなかったし……隆二さんには絶対迷惑かけるようなことしません」
「迷惑とかは思わないけど凄い心配だっつってんの。ある程度は良いけど、一人でメトロとか乗るなよ?」
頷いた弾みで、彼女の利発そうな額から雫が流れた。
「……まぁ……英語も問題ないこと分かったし?お土産貰っちゃったし?パーク楽しかった?」
「楽しかった!スタジオツアーが楽しかった!」
「そう?」
「日本のよりコンパクトだけど迫力もあったし、全然並んでないの!」
「へぇ、意外」
「でしょ!?あとね」
楽しそうに話すAを見てると“逞しくて良いじゃん”と思えてくる。
部屋でジーっと俺の帰りを待ってるより、自分で楽しんでやろうと行動に移す彼女の方が俺も見てて楽しい。
「隆二さんに連れてきて貰わなかったら一生行けなかったかも!」
いや、その行動力があれば行っただろ絶対。
「楽しかったぁ……凄く楽しかった」
子供みたいな顔でニコニコしながら呟く彼女。
「一人で寂しくなかった?」
「……ちょっとだけ」
首をかしげて笑う彼女が切なくて、でも愛らしくて。
「おいで」
バスタブの中で向かい合って膝に乗せると、彼女は俺の肩に手を置いた。
「今度、もし、また来られるようなことがあったら隆二さんと行きたいな」
「そうだね、俺も行きたい。絶対もっと可愛いマグあるもん」
「えぇー、それ?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年3月29日 18時