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「今日はAが夜飯食べるような時間には帰ってこれそうにないから……ホテルのレストランで一人で食べられる?」
「一人で食べに行くのは?買いに行くのでも良い」
「良いけど暗くなったら出ちゃダメだよ?で……」
隆二さんは地図に四角を書いた。
「歩くのはこのエリアの中だけにして。分かった?」
「はい……隆二さんはどこで仕事するの」
「俺?俺はここ」
トンっと赤い点が打たれた場所は、ホテルから随分遠い場所。
「隆二さん……これ大変じゃないですか移動」
「んー……そうでもないよ?」
そうでもない、なんてことあるわけない。
遠いものは遠いのだ。
「あんまり何もないようなとこにホテル取ってもAが暇だからさぁ」
「……良いのに、私。隆二さん居てくれたら良いよ?それで」
「またぁ!そんなこと言って俺をこの場に留まらせようとする!」
「そうじゃなくて!」
隆二さんは「分かってるよ」と笑って地図を畳んだ。
「ここまで呼んだからには楽しんで欲しいじゃん?行きたいとこあったら教えて。明後日は自由だから連れてく」
「………」
「ん?」
肩を抱かれ顔を覗き込まれ、私は隆二さんの目を見つめ返した。
「何か……戸惑います。外国に連れてってもらったり、好きに過ごして良いよとか……こういう経験ないから」
「あってたまるかよ」
隆二さんがニヤリと笑ったとき、部屋の電話が鳴った。
「迎えかな……」
電話を取った隆二さんは数回返事をして、荷物を手にした。
「じゃあ行ってくるから。良い子にしてるよーに!危ないとこにはいかないよーに!分かった?」
「はいっ」
「ごめんね、来たばっかなのにバタバタしてて。夜はゆっくりしようね」
「うん」
ハグをしてキスをして、隆二さんは部屋を出た。
一人部屋に残った私は、隆二さんがチェックを入れた地図を広げる。
「今、ここで……んー……もっと詳しく知りたいな」
私は細かな地図を求めてフロントへと下りた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年3月29日 18時