雪椿の頃。7 (ページ39)

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部屋のバルコニーに出ると、ビーチがすぐそこに見えた。

砂粒が太陽の光を受けてキラキラしているのが手に取るように分かる。

波打ち際は更に太陽を反射して眩しくて、何も見えない位だった。

「風も、気持ちいいですね……」

あの白い砂の上に寝ころんで、何もかも忘れて隆二さんとぼんやり過ごしたらどんなに幸せなことだろう。

そんな絵を想像しながら目を閉じて深呼吸していると、ふわっと後ろから抱き締められた。

「気に入った？」

「はい！私には勿体ないくらい」

「そんなことないよ。一人にさせる時間があるからこれくらいはね」

私は回された腕に手を添え、隆二さんに頬を擦り寄せた。

「隆二さんありがとう。こんなにしてもらって良いのかな、ほんと」

「こんなにってまだ飛行機乗って部屋に来ただけじゃん」

「それだけでも“こんなに”ですよ」

「俺が離れたくなくて連れてきたんだから良いじゃん」

その言葉に一瞬、息をするのを忘れるくらい胸が高鳴った。

“ありがとう”とか“嬉しい”とか言う間も惜しくて、私は顔を近付け隆二さんにキスをした。

仕掛けたのは私の方なのに、角度を変えて繰り返される彼のキスに、すっかり飲まれてしまう。

まだ太陽も昇りきっていない時間に、潮風に吹かれながらバルコニーでキスをする────。

こんなに気持ちいいこと、してもらって良いんだろうか。

唇を離した隆二さんは、私の頭をポンッと撫で、部屋のソファを指差した。

「名残惜しいんだけど、ちょっとお勉強しよ」

「お勉強……」

ソファに座った隆二さんはペンを持ち、ホテルにあった観光マップを広げる。

「今ここ、サンタモニカ」

「うん」

「これがホテル」

「うん」