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「私は拒否されたことがショックだったんじゃなくて、からかい半分で男の人に近付く女だって思われてたのがショックだった」
「それで……その人とは」
「彼とはそれっきりです。私、せめてちゃんと見える女性になりたいって思いました。例え好きになって貰えなくても、その気持ちは本物なんだって分かってもらえるように」
「変わろうとしたってこと?」
「そう。ただ優しくするんじゃなくて、相手の弱さに触れるんだから言葉は選んで発しようとか」
「うん」
「変な男の人に引っ掛からないように隙を与えない所作を心がけようとか……」
必死で変わろうとしてたときの自分とトミちゃんが、私は重なって見える。
トミちゃんは、今の自分があんまり好きじゃないんじゃないだろうか……。
「トミちゃん私に憧れてくれてるけど……本当の私はそんなんじゃないんです。これは取り繕ってるだけ」
「……そうかなぁ?」
「え?」
「もう“本当の私”になってるんじゃないかなぁ。取り繕ってる人は、ボロが出るよ絶対」
そう言いながら私の頬を撫でる隆二さんの手は、いつもと変わらず優しかった。
「俺、いっつもAのこと良いなぁって見てんだよ。語尾が柔らかいとことか、目が優しいとことか」
歩くとき膝が伸びてるとこ
食事の時の姿勢
身ぶり手振りをしているときの手首のしなやかさ
相手の目をしっかり見て話すとこ
隆二さんは、こそばゆいくらいに、私の良いとこを次々あげていってくれた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年3月29日 18時