ひまわりと花言葉。side T ページ18
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クジャクが気まぐれに歩き回る柵の前に、道を挟んで休憩スペースがあった。
プラスチック製の座り心地の悪いイスに腰を下ろし、俺たちは暫く無言で炭酸をストローで吸い上げた。
「……私は」
あのときもそうだった。
話し始めるのは、いつも四季から。
「私は好きな人が出来るとその人さえいれば良いって思うタイプで」
「うん」
「一緒に暮らしてたことがあるんです、彼氏と。部屋にね友達連れてこられたりするのが凄く嫌で……私たちの世界に入られた、みたいに思って」
激しさと嫉妬が混じるような恋愛と目の前の四季が結び付かない。
「社交的で友達も多い人で、そういう部分を好きになったのに気が付いたら彼と友達が遊んでるとイライラするようになって」
「うん」
「今思うと結構ヤバイ女です。しょっちゅう連絡するんです“何してるの?”“どこに居るの?”って。束縛するし……。彼は嫌がるわけですよ、信用してよって」
「そっか……」
「私、別に浮気疑ってたわけじゃなくて……ほっとかれるのが嫌だった。私だけを見ててほしかった。それで、彼をどんどん縛るようになりました」
「うん……」
「喧嘩になって、好きだからこういうことしちゃうって言ったら、彼が口を開いて何か言いかけたんです。あれは多分……“こっちはそう思ってない”だった」
「分からないじゃん、そんなの」
「分かりますよ。男の人はね、聞かなくても分かるんです」
一瞬俯いた四季が、視線を上げクジャクを見た。
「段々、部屋に帰ってこなくなって1ヶ月くらいしたあと言われました。“自由にさせてくれ”って」
奇妙な鳴き声を響かせながら、鳥が1羽、俺たちの頭上を通りすぎる。
「それが別れの言葉です。落ち込んで、泣いて、こんな私も可愛く失恋したんですよ」
「それで……」
「何か、めんどくさくなっちゃって。深いところまで好きな人と関わるから傷付くんだなぁって。恋愛を避けて、諦めてみたら凄く楽になったんです」
「うん」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年3月29日 18時