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7階の社員食堂で、私はアイスコーヒーを一気飲みしてからホットコーヒーを追加で頼んだ。
「はぁ〜……」
「やっと一息ついた?」
「うん。やっと落ち着いた」
「ビックリしたよー。楽屋に“玄関にそちらのスタッフを名乗る女性が来てるんですけど”って連絡来てさぁ」
「へへ……」
「名前聞いて岩田さん大爆笑してたけどね。“そんな人知りません”って言おうよーとかって」
………岩田の野郎。
「忘れ物!って慌てちゃって……もうちょっと考えて動けば良かったよね、ごめんね」
「良いよ良いよ、気にしないで。隆二さんにはちゃんと渡したからね」
「………隆二さん、何か言ってた?」
「ん?」
「いや……吸入器ないなら、ないなりのルーティーンがあったかなって。余計なことだったかな」
「……直接聞けば良いじゃん」
「え?」
「あと1時間くらいで帰り仕度して出るからさ。その時にでも聞いてみたら」
「………んー」
マフラーの一件から、何となく隆二さんと顔を合わせ辛い。
彼の後ろに白ニットがチラチラして……。
「A、これはマフラーじゃないから。仕事に必要なものを届けただけ。スタッフとして聞けば良いじゃん。ね?」
「……私、隆二さんだから必死に届けたのかな……」
他のメンバーの物だったとしても、同じように届けたのかな。
“公私の線引きどうなってんのよ”
私も同じじゃないかな。
「Aは届けたよ、誰のものでも。私はそう思う」
「うん……」
「それか……言えば?隆二さんだから必死に届けたの♡って」
「………私が言うキャラだと思う?」
「思わない。Aはそういうとこクール」
私たちは何てことない話で笑いながら、コーヒーのおかわりを何度かして1時間を過ごした。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年1月21日 17時