4 side R ページ37
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「彼女と別れて寂しかったときに、たまたま傍に居た私に甘えただけじゃん。それを好きって言い聞かせてただけでしょ」
図星かもしれない。
結局、俺が弱かったから。
「嘘ついてたのは隆くんもでしょ。私ばっかり悪く言わないでくれる」
「……そうだね。嘘つかせたのも嘘ついてたのも俺かもね」
「彼女と別れたばっかりじゃなかったら、私のことなんか見向きもしなかったでしょ」
「どうかな……でも、その明るい感じに救われてたのは本当だから……。ありがとう」
「ありがとうって……」
愛は、こういう流れになることを予見していたような表情になった。
「ありがとうって完結の言葉だね、隆くん」
「………お互い、もっと傷付く前で良かったと思うよ、俺は」
それに……いつ終わったか分からないままより、良いだろ。
「……あの綺麗な人のとこに行くの?」
「……綺麗な人?」
「何でもない。これ以上嫌われると仕事しにくくなるから黙っとく」
「そう……嘘つかないでもさ、そのままの愛を好きになってくれる人居るよ。じゃあ……また良い仕事しようね」
背中を向けて歩き出した俺は、気になっていたことを思い出して振り向いた。
「ねぇ、あの“仲直り”って何なの?」
「……さぁ?仲直り出来たら良いなぁと思ってたんじゃないですか。お疲れさまでした」
今度は彼女が背中を向けて歩き出した。
「………お疲れさまでした」
急に光りを失って細まった愛の瞳。
あれを見ると、女は意外とカレンダーをめくるみたいに気持ちを切り替えられるのかもと、思ってしまう。
「隆二さーん!移動車待ってるから早く!あと俺らだけだよ。みんな待ちくたびれてるって!」
後ろから走ってきた岩ちゃんが、“急いで”と俺の肩を叩いて通り過ぎた。
“待ちくたびれてるって”
「あ……もうちょっと待ってー!すぐ行くから!」
岩ちゃんの背中に声をかけ、俺は携帯を取り出した。
“リンゴジュース、飲んだ?”
たった一言、それだけAに送ってからスタジオを出た。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年1月21日 17時