雪椿の頃。3 (ページ31)

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「おい、四季」

立ったままデスクに手をついてパソコンを操作している四季に声をかけると、彼女は「へーい」と返事をした。

「へーい、って……」

「何ですかー？午後から出張なんで忙しいんですよ私」

「A、来てないの？」

マウスを動かしていた四季の手が、ピタッと止まる。

「……何て言いました？」

「A、来てないの？」

「誰がですか」

「A！」

「マジかぁー……」

「……マジかぁーっつったな今。何だよ」

四季はこちらを向き、着ているスーツの裾を伸ばした。

「A、風邪引いて今日は休みです」

「風邪？」

「はい。何かぁ、どっかの男にぃ寒空の下2時間も待たされたらしくてぇ」

「俺のことじゃねぇか」

四季は口角を上げ「冗談ですよ」と俺の肩を叩いた。

「スタッフの間で風邪が流行ってるんです。ちーちゃんから始まって、新人さんに移って、次がAってことです」

「そうなんだ……」