Who. ページ29
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電車が駅に到着してホームに出た瞬間、私と隆二さんは同時に
「「ふぅー………」」
と、息を吐いた。
「す、すごい混みようでしたね」
「やばい。俺絶対サラリーマン出来ない」
“無理無理”と顔をパタパタ扇ぐ隆二さん。
私の腰の辺りには、まだ彼の手の感覚が残っている。
「結局最寄り駅まで来てもらっちゃって……」
「どうせここまで来たからマンションまで送るよ」
“そんな”とか“でも”とか言わず、私は隆二さんの言葉を笑顔で受け入れた。
こういうハプニングには、思いきって乗ってしまった方が楽しい。
「送る前に乗り越し清算するねー」
「あ、そうですよね」
隆二さんは入場券で7駅も乗ってしまったことになる。
「ちょっ、この姿ダサいから誰かに写真撮られないか見といて」
「了解です」
クスクス笑いながら切符を受け取り、改札を出る。
さっきまで密閉空間に居たせいか肌が少し熱かった。
「……あの、隆二さん、喉渇きません?」
「渇いた!」
「で、ですよね!?そこの自販で買いませんか?私、奢ります。お詫びに」
暗い夜道に煌々と光っている自販に近付き、私は“どれ?”と首をかしげる。
「んーとね、水」
「はい」
隆二さんの水を買い、私はいつものリンゴジュース。
「ここ、当たりつきなんです」
「当たんないっしょ?」
「それがそうでもなくて────」
“当たるんですよ”と言いかけた時、
「「えっ!」」
けたたましいメロディーが流れ、
「「当たった……」」
「ほ、ほら!早く!30秒以内だぞ!」
「わ、分かってますよ!あー、あー、あー」
グルグルと指を迷わせた末、私は結局またリンゴジュースのボタンを押した。
「何で同じの買うんだよ!?」
「だ、だって好きなんです。リンゴジュース」
「……初めて飯食った時も飲んでたよね?」
「はい……飲んでました!」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年1月21日 17時