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店員さんを呼んだ隆二さんがココアを2つ頼み、お互いようやく一息ついた。









「………何で待ってたの」









椅子の背もたれに体を預けている隆二さんに訊ねられ、私は思わず目を伏せた。









「……愛さん」









「え?」









「仕事じゃなくて、愛さんと約束があったから来ないんだと思って……」









「うん」









「で……何か色々考えちゃって……」









この答えはどうかと思ったけれど、冷えた唇から嘘が上手く出なかった。









「私との約束より大事なことなんだろうなって……」









聞く人が聞いたら、これは“告白もどき”。









「………何でこの話に愛が出てくんの?」









「何で……って……」









インスタ見たから……とは、流石に言えない。









「会ってないよ」









口ごもる私をそれ以上追及することもなく、隆二さんは「本当に仕事だった」と言った。









「マネージャーに聞いても良いよ。原稿の確認が急に入って……愛の出版社じゃなくてね」









「………本当に?」









「………電話してやろうか?今から」









隆二さんがポケットから携帯を取り出す仕草をしたので、私は慌ててそれを制した。









「い、良いです!!信じます!仕事だったんですよね!!」









隆二さんは笑いながら「良かった」と言って体を起こし両腕をテーブルにつけた。









「ほっぺた、やっと赤くなってきたね」









「……はい」









少しだけ縮まった、二人の顔の距離。









「お待たせしました。ココアお2つです」









テーブルに置かれた2つのココアから、優しい湯気が上がっている。









「いただきます」









一口すすると、自然と「はぁ〜」と溜め息が出た。









隆二さんはそんな私を目を細めて見つめながら、テーブルに肘をついて同じようにココアを飲んでいる。









「ん。仕事残ってるってアレ嘘でしょ?」









「あ……はい。何かそう言った方が隆二さん気ぃ使わないかなって……バレちゃってるんでどうしようもないんですけど……」









「そっか……ごめんね、本当」









「ぜ、全然!よく考えたら、私が待ってなかったら隆二さん仕事場から真っ直ぐ帰れたのに……ごめんなさい」

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年1月21日 17時

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